現場の人間と批判する人間
「タイベックスーツ」って、防護服と言われるけど、放射性物質が体に付着するのを防止するだけであって、ガンマ線のような放射線そのものを止める力は無いんだよ。
だから、事故現場に突入するときには、タイベックスーツを着て行くには行くんだけど、放射性物質からは守られるけど、放射線はそのまま浴びてしまうことになる。
だから、今回の原子炉建屋内に突入している現場の人達は、相当の放射線を浴びていることと思われる。
一応、被曝量が多くなり過ぎないように、一人当たりの作業時間を決めた上で、突入しているとは思う。
でも、少し考えれば分かると思うけど、原発の構造を理解して作業できる人間なんて、そうそう多いはずも無い。
かき集められる限りは、よその原発からかき集めて、作業員の確保に務めているかとは思うけど、原発で作業できる人間がそう多くない上に、やはり一番効率的に作業できるのは、その原発で働いていて構造を熟知している人間。
だから、同じ人間が、繰り返し突入しているのではないかと思う。
もちろん、原発作業員の年間の被曝量限度というのは決められてはいるけれど、多分今の現場は、そういうことを言っていられない状況じゃないかと思う。
私がこういう事を言うのは、彼らがなぜ、危険な事故現場に突入しているかを考えてもらいたいから。
彼らがなぜ、何か事あれば、自分の命を懸ける事になる場所で働いているかを、考えてもらいたいから。
これまでのマスコミ報道を見ていると、原子力関係で働く人の気持ちなんて、全く分からなかったでしょう。
むしろ、悪い気持ちで働いている人達のように思えたことでしょう。
マスコミ報道を見ていると、自分勝手な甘々な安全基準を振りかざし、悪い情報は隠蔽する、マッドサイエンティストのような集団に思えたことでしょう。
まぁ、反省し、改善していく点は確かにあると思うよ。
どこの業界にだってあるように、原子力業界にだってそれはあると思う。
でも、何か事あれば真っ先に命に関わる、家族を路頭に迷わせることになるかもしれないのは自分達。
そんないい加減な安全性で働こうとはしないよ。
実際に会って話してみれば、マスコミ報道から受ける印象のような、悪い人達ではないよ。
彼らは彼らなりの責任感で、仕事をしているよ。
行政にも言える事だけど、インフラ系って言うのは、キチンと出来て当たり前の仕事。
失敗すれば批判されるけど、成功しても誰も褒めてくれない仕事。
ましてや、「原子力」なんて、一般の人が聞いたら、気持ち悪がられる仕事。
でもそういう人達が仕事をしているから、首都圏に電気が送られていた。
新宿で遊べたのも、渋谷で騒げたのも、東北の片田舎で、そういう人達がキチンと仕事をしていたから。
「原子力? こえーw」
「大丈夫? 奇形児生まれない?w」
なんて、何も知らずに恩恵だけ受けている人間に、心無い冗談を言われても、苦笑いで受け流しながら、自分の仕事をしている人達がいたから。
彼らは彼らなりに、成功しても誉められない、失敗すればマスコミから叩かれる、でも日本の電気を支えているのは自分達だと、そういう責任感で仕事をしていたから。
今回まさに、そういう人達が事故現場に突入している。
多分、被曝量の限度はもう守られていない。
けど、原発を守れるのは彼らしかいない。
彼らが守らなければ、近隣住民の多くに被害が及ぶことになる。
首都圏を始め、多くの国民が、恩恵を受けていた電気。
その電気を作る場所が、危険な状態になった時、それを守ろうとしているのは、現場の人。
今このときに、早速、原子力批判が湧き上がっている。
原子力は危険だ、リスキーだ、もう作らない方がいい。
だから言っただろう。俺は前から危険だって言っていたって。
俺の言うことを聞かないからこうなったんだ。
そうは言っても、実際に電気を作り、実際に被害拡大を食い止めているのは、現場の人。
これまで、原子力を自分の仕事として、キチンと出来て当たり前と言われながら、仕事してきた人。
今この時に批判を展開する人間と、今この時ときに仕事を果たそうとする人間。
どちらが社会の役に立っているのかは、明白だと思う。
今この時に、この場の雰囲気で原子力批判を展開することが、彼らの気持ちに応える事になるのだろうか。
冷静に考えることが必要では無いかと思う。