これは公表しないのも理由がある

ドイツが行っている拡散予測を見た時から、いくつか疑問を感じていた。
その一つが、この予測図には、μGyとかμSvとかの単位が書いて無いけど、それでどんな予測が出来るのだろうか、と。

そのうち、予測図を翻訳してくれた人がいて、合点がいった。
http://www.witheyesclosed.net/post/4169481471/dwd0329

翻訳によると、ドイツ気象庁の拡散シミュレーションとは、こういうものらしい。

「要注意:放出源の濃度が明らかでないため、この予想図には空気中にある放射性粒子の実際の密度が反映されているとは限りません。発電所からの仮想上の放射が天候条件によってどのように拡散し希釈化されていくのかのみが表現されています。」

ポイントはここ。

【仮想上の放射が天候条件によってどのように拡散し希釈化されていくのかのみ】

つまりは、放出というのは、

【仮想上の放射】

ということらしい。


したがって、予測図にある濃度の色分けも、

【上から順に「濃度は僅かに希釈」「濃度はかなり希釈」「濃度は極めて希釈」となります】

というだけのことらしい。

だから、

【よってこの図から危険度の評価はできません。】

というシミュレーションだと言うことだ。


したがって、こういう注意書きも何度もあるとの事。

【この図はあくまでも気候条件のみによる予想であり、空気中の有害物質の実際の密度は反映されておらず、放射能濃度測定値による危険度評価とも関係ありません。同一視しないように】



つまり、ドイツ気象庁が行っている拡散予測シミュレーションとは、仮に福島原発から100の放射性物質の放出があったとすれば、気象条件から考えて、どういう風に広がっていくか/薄まっていくかを示したものに過ぎない。
したがって、明日はあの地域が何μGyだとか、別の地域は何μSvだとか、そういう風に【危険度を予測できる】ものでは無い、ということだ。

単に、明日の予想される風向きなどからして、もし仮に100の放出があったとすれば、こういう風に広まるでしょうと、そういうことを示しているに過ぎないと。


始め記事を読んだときから、どうにも疑問を感じていた。

記事によると、
IAEAから送られてきた放射性物質の放出開始時間や継続期間、どれくらいの高さまで上ったか」
スーパーコンピューターに入力して予測するという話だが、

IAEAに放出時間や継続時間、上昇高度を計測できる機器があったのか、
・予測を行っているドイツ気象庁の予測図に、μGyとかμSvとかの単位が無いのは何故か、
・そもそも、今の福島第一原発から、周辺環境に影響を及ぼすレベルの、気体状の放射性物質が漏れているのか、
・漏れているとすれば、周辺のモニタリングポストで捉えられているはずなのに、昨日の日記で示したとおり、そうした傾向が見られないのは何故なのか―


翻訳を読んで、納得がいった。
【仮想上の放出】があった場合の、予測であったということなのだろう。


そうなってくると、この記事の読み方も変わってくる。

記事は、以下のように読み替えられるべきではないだろうか。

気象庁が(仮に放射性物質の放出があった場合の)同原発から出た放射性物質の拡散予測を連日行っているにもかかわらず、政府が公開していないことが4日、明らかになった」

「ドイツやノルウェーなど欧州の一部の国の気象機関は日本の気象庁などの観測データに基づいて独自に予測し、(仮に放射性物質の放出があった場合の)放射性物質が拡散する様子を連日、天気予報サイトで公開している」

「具体的には、IAEAから送られてきた(仮想上の)放射性物質の放出開始時間や継続期間、どれくらいの高さまで上ったかを、風向きや天候など同庁の観測データを加えた上で、スーパーコンピューターに入力し、放射性物質の飛ぶ方向や広がりを予測している」

つまりは、この記事の話は、仮想上の放射性物質が出た場合の拡散予測を、毎日国民に公開するかどうかの問題、ということになるのだろう。



日本の国民が、これは仮想上の、例えばの話に過ぎないと理解して、拡散予測を受け止めることが出来るのなら、政府も公表をためらう事は無いだろう。

だが、国民の原発に対する連日の反応を見るにつけ、とてもそうは思えない。

この拡散予測のモヤモヤの広がりを見て、今日はここが危険だ、明日はここが危険だと、不安を募らせ、風評を広げることが目に見えている。

何より、性質の悪い、人の不安を煽り立てる人間もいる。
【仮想上の放出】に過ぎないのに、それがあたかも危険が差し迫っているかのように、煽り立てる人間が必ずいるし、多くの日本国民の放射線に対する理解は、そういったデマを一蹴できるほどに高くは無い。
不安を煽り立てる輩に煽られて、不安を増幅し、混乱を広げることになってしまうだろうことは、充分に危惧される。



ドイツ気象庁が行っているようなシミュレーションは、予測に過ぎない。
それも、【仮想上】の。

一方、日本政府と自治体は、各地域の放射線量がどうであるか、環境中の放射能がどうであったかを調べ、毎日毎日、公表している。

日本国民が、放射線量の動向を調べ、自分の行動を判断するには、【仮想上の】予測ではなく、実際の測定結果であるこれらの方が、遥かに有益であると思う。



このような【仮想上の】シミュレーション結果は、日本から遠く離れた、影響のほとんどない場所で、もし放出されたらどうなるかを興味関心から考えてみたい人達にとってはメリットが多くても、今の日本で公表することで、メリットがデメリットを上回るかどうかは難しいところだと思う。

特に、情報を捻じ曲げ、不安をかき立てる人間が間に入ることを思えばなおさら。

そんなわけで、私はこの件については、政府が公表に否定的なのも、それなりの理由があるものと考える。