やっぱり公表する必要無かったね、こんな予測

公表された気象庁のHPを見て、よく分かった。
というか、やはり昨日、ここで推測した通りだった。

【仮想上の】放出があったとして、風向きなどの気象条件から考えて、拡散するとしたら多分こういう風に拡散するでしょうと、単にそういう予測に過ぎなかった。


実際の放出予測に基づくわけでもなく、したがって、実際の放射性物質の広がりを予測するものでもない。
明日はあの地域が何μGy、別の地域は何μSvと、そういう風に【危険度を予測できる】ものでは無い。


おかしいと思ったんだよね。
昨日の読売の報道じゃ、IAEAの要請を受けて、IAEAが示した放射性物質の情報に基づいて予測する、って書いてあったけども、

IAEAが、福島原発放射性物質の情報を収集できる機器を持っていたとは思えないし、
・予測を行っているドイツ気象庁の予測図にも、μGyとかμSvとかの単位も無いし、
・そもそも、今の福島第一原発から、周辺環境に影響を及ぼすレベルの、気体状の放射性物質が漏れているかどうかも微妙だし。
(もし漏れているとすれば、周辺のモニタリングポストで捉えられているはずなのに、捉えられていないし、そもそも放射線量は減少傾向)


で、気象庁のHP見たら、しっかりと、
IAEAの示した仮定の放出に基づいた計算】だと、しっかりと書いてあったよ。

んで、そのIAEAの示した放出条件というのが、これ。

放出開始:2011年4月2日/12時00分(協定世界時
期間: 72(時間)
放射性核種: I-131
総放出量: 1 Bq (ベクレル)
放出の実効高さ: 基準高: 20(メートル)、頂: 500(メートル)
http://www.jma.go.jp/jma/kokusai/EER/eer_sample.pdf

これだけ。
本当に、これだけ。

もう本当に、【仮想上の】放出に基づいた予測であって、実際の汚染状況を予測できるものでも、実際の被曝状況を予測できるものでも無い、【危険度を予測できる】ものでは無いというのは、これだけ見ても明らかだよね。


何か、総放出量が1ベクレルでは何の意味も無い、と批判している人もいるけど、1ベクレルって言うのは、IAEAの方が計算条件として送ってきた数字だよ。
それで日本政府や気象庁を批判するのも、的外れだよね。



そもそも、昨日の読売新聞は、こんな書き方してたんだよ。


気象庁が同原発から出た放射性物質の拡散予測を連日行っているにもかかわらず、政府が公開していないことが4日、明らかになった

○ドイツやノルウェーなど欧州の一部の国の気象機関は日本の気象庁などの観測データに基づいて独自に予測し、放射性物質が拡散する様子を連日、天気予報サイトで公開している

○具体的には、IAEAから送られてきた放射性物質の放出開始時間や継続期間、どれくらいの高さまで上ったかを、風向きや天候など同庁の観測データを加えた上で、スーパーコンピューターに入力し、放射性物質の飛ぶ方向や広がりを予測している


こんな書き方したら、普通の人は、福島原発からは今も気体状の放射性物質が放出されていて、外国ではその拡散予測を公表しているのに、日本だけ隠蔽しているように思っちゃうよね。

でも実際は、あくまで【仮定上の】予測であって、実際の【危険度を予測できる】ものでは無かったというわけだ。

それにそもそも、今、福島第一原発から、環境に影響を与えるほどの、気体状の放射性物質が放出されているかも、そもそも微妙なのにね。

酷い書き方だよね。
読売新聞は。



この拡散予測を、政府に出せ出せと息巻いていた、読売新聞を始めとした人たちは、これで何をしたかったんだろうね。
IAEAが、総放出1ベクレルで計算してね、と求めてきた拡散予測を公開させて、何がしたかったんだろうね。
各地点のBqも、μGyも、μSvも書いてないような拡散予測を公開させて、何をしたかったんだろうね。


単に、ドイツ気象庁みたく、モワーっと広がる不気味な拡散予測を広めて、「東京は既に汚染されている!」だの、「早く関西に逃げろ!」だの騒いで、不安を増幅させて、混乱に拍車をかけたかっただけなんじゃないのかい。
単に、騒ぎたかっただけなんじゃないのかい。

微量の放射性物質が検出されただけで不安に陥ってしまう日本の国民に対し、Bqも、μGyも、μSvも書いてないような拡散予測を公開したって、何か建設的な意味が大きいとは思えないんだよ。
冷静な判断材料に加えられるメリットと、不安から混乱に陥るデメリットを比べて、メリットがデメリットを上回るとは思えないんだよな。

政府に出せ出せと息巻いていた、読売新聞を始めとした人たちは、これで何をしたかったんだい。


最後に、気象庁のHPから、今回の拡散予測の要点をまとめておく。
http://www.jma.go.jp/jma/kokusai/kokusai_eer.html

■環境緊急対応地区特別気象センターについて
・当庁は、環境緊急対応地区特別気象センターとして、IAEAの要請に応じ、大気中に放出された有害物質の拡散予測情報を提供しています。
IAEAまたはメンバー国が必要と考えた場合に、放出源に関する情報を示して計算を要請し、その結果を要請元に回答します。
IAEAの要請は、放射性物質の放出条件が【仮定】(72時間にわたって1ベクレルの放射性物質が放出されるなど)されており、当庁はそれに基づいて72時間分の拡散を予測しています。
・これらの計算結果は、IAEAの指定する放出条件に基づいて計算したものであり、【いわば仮定に基づくもの】であって、【実際に観測された放射線量等は反映されていません】。
・当庁の同業務における計算の分解能は100km四方と、避難活動等の判断にとって極めて粗い分解能で行われているものであり、このため、【この結果は国内の対策には参考になりません】。


まぁ、やっぱり、昨日書いたとおり、あまり意味の無い予測だと思うよ。
こういうものを気にするくらいなら、これまでにも毎日毎日、国が発表してきている原発周辺や各自治体のモニタリング結果の方がよっぽど役に立つ。