なぜ今でも降っているか、なぜ減少しているか

端的に言えば、原発からの放出はほとんど止まっているが、過去に放出されたものの残りが、降り続けているから。

放射性物質の降下物と聞いて、まずは、原発からの放出が心配されるが、原発周辺や各自治体のモニタリング状況を見て、放射線量の上昇は確認できない。

もし、福島原発から今でも、環境に影響を与えるレベルの、気体状の放射性物質が放出されているなら、これらモニタリングで捉えられているはず。

それが無いということは、そのような放出は、3月15日周辺の水素爆発以降は、無いか、あってもほとんど微量で、環境に影響を与えるレベルでは無いと考えている。

水素爆発の以降では、3月21日前後が大きなピークを示している。
これは、雨によるもの。
水素爆発で放出され、大気中に漂っていた放射性物質が、雨に付着した状態で地表に落ちてきたもの。

3月21日前後と言えば、水道水の買占め騒ぎが思い浮かぶだろう。
つまり、この雨につられた降下物が、水道水に影響を与えたということ。
そしてその後は、特に大きな上昇も無く、減少傾向が続いている。


では、今落ちてきている降下物は何か。
まず一つは、水素爆発で放出されて、大気中を漂っていた物の残り。

放射性物質が放出された後、多くは数日の内に地表に落ちるが、全てが落ちるわけではなく、その内の少しは大気中に漂い続ける。

放出されて上層の気流に乗ったものは、遠くアメリカなどにまで運ばれる訳だが、そこまでではなく、少量の大気中に漂い続けたものは、少しずつ地面に落ちることになる。
これがまず一つ。


二つ目は、一度地面に落ちたものが、風などで再び大気中に巻き上げられ、それが再び降下物となって検出されたもの。
放射性物質は、微小とは言えあくまで「物質」なのだから、風が吹けば再び巻き上げられて、またその付近に降下する。

過去に多く降った地域と少なく降った地域を比べて、今でも多く降った地域の方が多く検出されるのは、こういった理由からではないかと思われる。


そんなわけで、今でも降下物が検出されるとしても、それは、福島第一原発から、環境に影響を与えるレベルでの、新たな放射性物質の放出が続いているからではないと考える。

過去に放出され、空気中を漂い続けた残りが落ちてきているのと、一度落ちた物が、再び舞い上げられて落ちてきているのだと思う。


このニュースに対しては、

「降下量が減少しているかどうかではなく、累積の降下量だろう」

という指摘もあり、それはそれで肯ける部分もあるが、ただ、累積で考えるとしても、考えるポイントはあくまで、「健康に影響を与えるレベルかどうか」。

放射性物質が有るか/無いかと言えば、震災前だって、核実験由来の放射性物質は、地球上のどこにでもあったのだから、有るか/無いかを問題にするのは意味が無い。

今までは本気になって分析しなかったから、知らなかった/気にならなかっただけで、本気になって分析すれば、新宿だって、渋谷だって、核実験由来の放射性物質が、検出されてもおかしくなかったのだから。

なので、あくまで、「健康に影響を与えるレベルかどうか」。


そして、東京なら東京、ひたちなか市ならひたちなか市で、空間中の放射線量は計測されており、健康には全く問題の無いレベル。

この点から考えても、累積を考えたとしても、健康には影響のないレベルだと思われる。


ちなみに、以下は、以前書いた日記からの抜粋。

【余談】
ちなみに、セシウム137の話だけど、多くの人は、半減期30年と聞いて、30年間は半分にならないと思ってる感じだよね。
セシウム137が100ベクレル検出されたら、半分になるには30年待たなければならないと。
だけど、今回示した数字のように、数日の間で大きく下がることもある。
というのも、要は、空から降ってきた微小な物質の話なんだから、土の上に落ちても、風が吹けば飛ぶし、雨が降れば流れるかもしれない。
例えば、降った後に台風でも来れば、一気に薄まってしまうかもしれない。
なので、必ずしも、昨日検出された値が半分になるには、30年待たなければならないと、そういう話でもないんだよ。
だからこそ、環境モニタリングが継続的に必要だと、国の防災指針なんかで書かれているんだよ。