海の汚染状況について

私の日記では、汚染水の海への放出については、これまで、

・【高濃度】汚染水の流出を抑えるためには、残念だが止むを得ない
・海への放出ならば、拡散されるのでその影響は小さくなる

という趣旨のことを書いてきた。

4月4日の、【低レベル】汚染水1万1500トンの放出については、さすがに私も残念だったが、「1万トンの汚染水の放出」という言葉のイメージだけで感情的になるのではなく、その影響を、冷静に考えていくことが必要だと考えている。

そんなわけで、4月4日午後7時の放出開始後、海水モニタリングの結果が出るのを見守っていたが、今回、東京電力から速報値が公表されたので、それを示す。

なお、記述の簡潔のため、最新データの、濃度限度に対する倍率のみ記載する。
(つまり、1倍を超えていれば基準値超え、1倍未満であれば基準値以内)


○福島第一北放水口付近(5・6号機放水口から北側に約30m)
ヨウ素131 : 1000倍
セシウム134 : 380倍
セシウム137 : 270倍
(採取時刻:4月6日 14:25)

○福島第一南放水口付近(1〜4号機放水口から南側に約330m)
ヨウ素131 : 93倍
セシウム134 : 40倍
セシウム137 : 28倍
(採取時刻:4月6日 14:05)

○福島第二北放水口付近(福島第一から南側に約10km)
ヨウ素131 : 55倍
セシウム134 : 18倍
セシウム137 : 12倍
(採取時刻:4月6日 9:05)

○岩沢海岸付近(福島第一から南側に約16km)
ヨウ素131 : 65倍
セシウム134 : 18倍
セシウム137 : 12倍
(採取時刻:4月6日 8:35)

○福島第一敷地沖合15km地点
ヨウ素131 : 5.3倍
セシウム134 : 1.5倍
セシウム137 : 1.1倍
(採取時刻:4月6日 12:29)

○福島第二敷地沖合15km地点
ヨウ素131 : 0.63倍
セシウム134 : 不検出
セシウム137 : 不検出
(採取時刻:4月6日 12:52)

○岩沢海岸沖合15km地点
ヨウ素131 : 0.6倍
セシウム134 : 不検出
セシウム137 : 不検出
(採取時刻:4月6日 13:15)

広野町沖合15km地点
ヨウ素131 : 不検出
セシウム134 : 不検出
セシウム137 : 不検出
(採取時刻:4月6日 13:37)

南相馬市沖合15km地点
ヨウ素131 : 0.6倍
セシウム134 : 不検出
セシウム137 : 不検出
(採取時刻:4月6日 11:30)

○請戸川沖合15km地点
ヨウ素131 : 9.5倍
セシウム134 : 3.0倍
セシウム137 : 2.1倍
(採取時刻:4月6日 11:54)


一見して分かるとおり、放出口から離れれば離れるほど、希釈され、濃度が薄まっていることが分かる。

例えばヨウ素131で言えば、放出口近傍では1000倍もの濃度があったのに対し、南側に16kmの海岸付近では65倍にまで減り、沖合に15km離れれば、5〜9倍に薄まり、さらに、基準値以内や、不検出と言った場所もある。
セシウムについても、同様の傾向を示している。

海へ放出されたものは、拡散により希釈されると思っていたが、実際にその傾向が現れているようだ。
これがさらに、20km、30kmと離れれば、水の体積は何倍にもなってくるので、さらに希釈は進むと思われ、不検出となる地点が増える可能性もあるだろう。


もちろん、今回の数値だけで問題が消え去ったと言うつもりは無いし、小女子から暫定基準値超えの放射能が検出されたことも事実だ。

しかし、このような数値を見れば、周辺海域の汚染は甚大で、海産物は今後数年間、何も食べられなくなった、と考えるのもまた、慌て過ぎであるように思う。


今後も継続的にモニタリングを続け、海の汚染状況を中止していくことは、もちろん必要だ。
基準値を超えた海産物の摂取を控えることも大切だろう。

しかし、基準値未満の海産物まで、危険というイメージだけで避けるのは、それもまた行き過ぎであるように思う。


今回の数値から推測できるように、危険でない周辺海域もあるだろうし、安全な水産物もあるだろう。

放射性物質で汚染 = あの辺りの海産物は全部危険」

という短絡的な行動ではなく、何を避ける必要があり、何は避ける必要が無いか、それを冷静に考えていくことが、必要ではないかと思う。



ちなみに、今回放出された、「集中廃棄物処理施設」にあった1万トンの【低レベル】排水のことだが。
1cc当りのヨウ素放射能で比べれば、流出を止めたかった2号機タービン建屋の【高濃度】汚染水は、数百万ベクレル程度なのに対し、集中廃棄物処理施設の【低レベル】排水は6.3ベクレル。
2号機タービン建屋の【高濃度】汚染水、10リットル程度に含まれる放射能と、【低レベル】排水1万トンに含まれる放射能の量が、同レベルであるという。
http://www.asahi.com/national/update/0404/TKY201104040245.html?ref=reca

周辺海域への汚染を考えるならば、【高濃度】汚染水を漏らし続けるよりも、今回の【低レベル】排水1万トンの放出の方が、環境への汚染は小さかったことになる。

確かに、【低レベル】排水1万トンの、そのままの放出は残念なことではあったが、関係者なりに、被害を一番低く抑える方法を、考えたのではないかと思う。