情報が隠蔽されてるから風評被害は正しいという件

福島県から避難してきた児童が、「放射能がうつる!」と差別された話。



最近、ネット界隈をうろついていると、こんな言説を目にする。

「政府が情報を隠蔽しているから、自衛に走るんだ。だからこれは風評被害ではない。正しい自衛反応だ」


この言説が正しいなら、同じ理屈で、今回の差別も正当化できちゃうんだよ。



もしかしたら、この児童は物凄い量の被曝をしていて、体内にも物凄い量の放射性物質を取り込んでいるかもしれない。
そうすると、この児童の体からもガンマ線が出ているから、この児童に近寄ったらこっちまで被曝してしまうかもしれないよ。

政府は、これまでのデータからして、そんな大量の放射性物質を体に取りこんでるわけ無いって言うけど、そんなのは情報が隠蔽されてるから信用できないしね。

確かに、児童の体から出ているガンマ線量は周囲の人間にすれば微弱かもしれない。
でも、受ける線量が微弱だから健康には影響無いって政府の説明も、情報が隠蔽されてるから信用できないしね。
「直ちに(ry」ってやつだ。
もうそんなの信用できないよ。

だから、これは差別じゃないよ。
風評被害じゃないよ。

情報を隠蔽している政府が悪いんだよ。


と言う感じで、正当化できちゃうだろうね。

もちろん、僕からすればこんな理屈はバカバカしい。
今のデータからすれば、そんな大量に体内に取り込んでいるわけが無いし、もし児童の体から放射線が出ていたとしても、そんな線量じゃ周りの人間に影響のあるレベルじゃ、全然全然全く無い。

一応、児童の体内に放射性物質があるとして、周りの人間がどれだけ被曝するかを計算できないことも無いけど、そんな計算するのが、あきれるくらいバカバカバカバカバカバカしいレベルの話だ。


でも、あくまで情報は隠蔽されてて、政府の言うことは信用できないんだ、って言うなら、これまでのモニタリング結果も信用できないし、何ミリシーベルトまでなら浴びても大丈夫って説明も信用できないわけだから、差別は何でも正当化できちゃうだろうね。

この児童がどれだけ被曝しているかも信用できないし、微弱な放射線は危険じゃないって説明も信用できないし、回りの児童が避けるのもしょうがなくなるよね。



「だから、政府はしっかりと検査するべきなんだ」
と言うのかもしれないけど、それだって変な話だ。

じゃあ、この児童や野菜もそうだけど、心配なものは全部一つ一つ検査するとしよう。
でも、そもそも政府の言ってることが信用できないんだから、政府の検査結果が信用できるわけも無いよね。

まさか、政府の情報は信用できないけど、政府の検査結果は信用できるとか、そんな変な理屈は無いでしょう。

じゃあ、(財)日本分析センターとか?

ダメダメ。政府の息のかかってる機関は信用できないよ。
天下りだっているだろうしね。

じゃあ民間の検査機関に、児童や野菜を全部検査させて、それで大丈夫だったら信用することにしようか。
でも、それだけの民間検査機関が現実にあるの?
そもそも、その民間検査機関の検査・分析能力を誰が保証するの?
ちょっと現実的に厳しいよね。

で、そういった民間検査機関の検査が終わるまでは、児童への差別は正当化され続けるのかな。
なんたって、政府の言うことは信用できないからね。

まぁ僕としては、今のモニタリング結果を見ただけで、そんな全部の検査なんて、必要ないと思うけどね。



隠蔽とか言い出せば、どんな説明だって否定できるんだよ。

どんなトンデモ理論だって正当化できるんだよ。


ネットを歩くと、情報が隠蔽されているって、これまでに積み上げられてきた科学的基準さえ、平気で無視する人がいる。
全然心配する必要の無いレベルのものまで、心配してああした方がいい、こうした方がいい、外に出ない方がいい、関西に逃げた方がいいと言う人がいる。

まぁ自分で考えてやってるだけなら大して広まらないけど、それが他人にまで広まると、まさに「風評」。


隠蔽とか言い出せば、どんな説明だって否定できるし、どんなトンデモ理論だって正当化できる。
そうやって、無闇に不安を煽ることが、風評被害の元になると思うんだけど。


政府が情報を隠蔽しているから、これは風評被害では無いなどと、言える状況じゃ無いと思うけどね。
上に書いたように、そういう理屈の行き着く先に、こういう差別が存在し得るのだから。



あと最後に、児童の体からの放射線云々って書いたけど、原発事故が起きる前から、放射性物質は人間の体の中にあるから。
誰の体の中でも、放射線が出ているから。

放射能怖い」「放射線がうつる」
って言って逃げていった子供。
その子供の体内にだって、その親にだって、放射性物質はすでにあるから。
体の中で放射線は出ているから。

この児童からの放射線が気になるくらいなら、もうすでに家の中で、お互いの体から出る放射線で被曝しまくってるから。

毎日食べているお米、パン、お父さんが飲むビール、どれにだって、分析にかけりゃ放射性物質が検出されても不思議じゃないから。

全く、バカバカしい騒ぎだよ。


【追記】
僕の体の中にも、ヨウ素131やセシウム137が入っていると思う。
出荷制限地域の家庭菜園の野菜もらって食べてたし、帰ってきてもうがいもしないし(別の理由で、さすがに手だけは洗う)。

でもセシウム137は元から普通に人体にあるし、他の放射性物質だって元から体内にある。
なので気にしない。だって気にならないレベルだもの。

だから、福島の人を放射能って差別するなら、僕のことも差別してもらわにゃならないな。
ああ、もちろん、差別する側の人にも、放射能はあるけど。