母乳から放射性物質と聞くとびっくりするよね

■母乳から微量の放射性物質=市民団体が検査―福島
時事通信社 - 04月20日 20:03)
 福島第1原発事故で水道水や農作物から放射性物質が検出された問題を受け、市民団体「母乳調査・母子支援ネットワーク」(村上喜久子代表)は20日、福島市内で記者会見し、福島など4県の女性9人の母乳検査で、茨城、千葉両県の4人から1キロ当たり最大36.3ベクレルの放射性ヨウ素131が検出されたと発表した。
 厚生労働省は水道水の放射性ヨウ素が同100ベクレルを超える場合、粉ミルクなどに入れて乳児に摂取させないよう求めているが、母乳については明確な基準はなく、村上代表は「今回の数字が高いとも低いとも判断できない」としている。

ヨウ素131が、1キロ当たり最大で36.3ベクレル、とのことだったので、始めは別に書かないでいいかなと思った。
別に心配するレベルじゃないし。

だけど、何か心配してそうな人がいる気がするので、短く書いておくことにする。


今回の、ヨウ素131が36.3Bq/kgというのは、要は、水道水1リットルにヨウ素131が36.3ベクレルあったのと、だいたい同じようなもの。

36.3Bq/リットルの水道水(基準値未満)で、ミルクを作ったのと同じようなもの。

だから、これが危険かどうかは、前回の水道水騒ぎのおさらいをすればいいだけの話。


そもそも、分析にかければ、母乳から放射性物質が検出されるというのは、前回の水道水騒ぎから予想される話。
日本産科婦人科学会が、3月中に既に述べていたように、母親が摂取したヨウ素131の4分の1程度が、母乳中に出てくるのだから。


それにそもそも、まぁこれは私の考えになるけど、原発事故が無くても、乳児や母乳に放射性物質は含まれていたと思うよ。

女性の体には、何事も無くても、6000ベクレル程度の放射性物質が含まれている(男はもっと多い)。
だから、その母体内で形作られる乳児にも、放射性物質は移行しているはず。

また、母乳中には成分としてカリウムが含まれているが、放射性物質であるカリウム40もこれと同じ動きをするから、通常でも、母乳を通して乳児の体内に入っていたと思う。
(だからと言ってこれが危険だったとか、そういう話ではない)

要は、本気になって分析しないから放射性物質の存在に気が付かなかっただけで、本気になって分析すれば、これまでにも放射性物質は検出されていたと、そういう話だと思う。


つまり、何が言いたいかというと、母乳に放射性物質がある/無い、というのはあまり重要じゃなく、出たとしてそのレベルがどれくらいであったかが重要ということ。


で、ヨウ素131が、1キロ当たり最大で36.3ベクレル、という話なら、そんな危険じゃないよね、という話。

そのそも、環境中のヨウ素だって、新たな大量放出が無い以上は、減っていくだけだしね。
人体中のヨウ素だって同じ。


短く書くつもりが、また長くなってしまった。
まぁ、この手の話が心配な人は、この辺を読んでおくといいかも。

■日本核医学

 政府通知では、成人・小児の放射性ヨウ素に関する暫定規制値を、飲料水300 Bq/kg、牛乳・乳製品300 Bq/kg、野菜類(根菜類は除く)2,000 Bq/kgとしています。
 また、同通知では、特に乳児については飲料水の暫定規制値を100 Bq/kgとしています。これは乳児への影響は大人より3倍程度高いことが知られているためです。なお一部の報道に、「乳児の甲状腺が発達途上でヨウ素が取り込まれやすい」という説明がされていますが、取り込みの力に年齢差はありません。

 皆様方の健康への影響を、もっとも影響を受けやすいと考えられる乳児を例に考えてみます。乳児については、飲料水に含まれる放射性ヨウ素に関する暫定規制値の上限は100 Bq/kgとなっています(上述のようにこれが最も厳しい上限設定です)。この飲料水で調整したミルクを1回200 ml、1日5回飲んだとします。1日1,000 mlですから体内に約100 Bqの放射性ヨウ素が乳児体内に入ることになります。仮に1 年間飲んだとして、100x365 Bqつまり36,500 Bqです。国際放射線防護委員会ICRP報告にあるとおり、約120,000 Bqの放射性ヨードが体内に入った状態(甲状腺線量0.020Gy程度)でも子供達の甲状腺癌発生が増加する危険はありませんので(平成23年3月18日の本学会アナウンスをご覧ください)、このような条件であっても、子供達には影響はでないことがおわかりいただけると思います。

http://www.jsnm.org/japanese/11-03-25

それと、日本産科婦人科学会も、この手の話について発表を出している。
http://www.jsog.or.jp/news/pdf/announce_20110418.pdf

こっちはちょっと長いので引用はしないが、生活面も含めて日本核医学会よりも厳しく見込んでいるようなので、より心配な人はこっちを参考に行動するといいんではないでしょうか。
まぁ中身としては、あんまり心配しなくていい、という感じだけど。


まぁ、「母乳から放射性物質」と聞くと、ショッキングなタイトルなので、ビックリする人は多いだろうけど。

でもまぁ、私の日記に足を運んでくれる人は、こういうタイトルだけ見て、その度にビビらずに、中身の数字を見て、冷静に行動してくれるようになってくれると嬉しいかな。


【追記】
日本核医学会の見解としては、上に示したものよりも、もっとそのものスバリの発表があったので、追記しておく。

『妊娠中のお母さん、授乳中のお母さん、将来のお母さんへ』

 現状の放射性物質の量では、妊娠中のお母さんのおなかの中の赤ちゃん、授乳中のお子さん、将来のお母さんにも心配のないことをお伝えいたします。
私たち核医学を専門とする医師は、今回の原子力発電所から漏れ出た放射性物質の一つである放射性ヨウ素と全く同じものをお薬として日常的に使用しており、その取扱いに精通しています。ご安心のうえ以下の話をお読みください。

Q1.妊娠中です。おなかの中の赤ちゃんの影響が心配です。
A1.ご心配の必要はありません。
(詳細はリンク先参照)

Q2.母乳を与えています。子供に影響はありませんか?
A2.ご心配の必要はありません。
(詳細はリンク先参照)

Q3.粉ミルクを水道水で調整して飲ませても大丈夫でしょうか。
A3.ご心配の必要はありません。
(詳細はリンク先参照)

Q4.将来生まれてくる子供に影響が出るのではないかと心配です。
A4.ご心配の必要はありません。
 私たちが行っている診療では、甲状腺癌やバセドウ病の患者さんに、放射性ヨウ素をお薬として飲んでいただく放射性ヨウ素内用療法(アイソトープ治療)を受けていただくことがあります。患者さんには、若い方も多く含まれます。どちらの治療も今回の原子力発電所事故で皆さんの体内に入る可能性がある放射性ヨウ素量とは比べものにならないほど大量の放射性ヨウ素を治療に用います。私たちは、自分たちが担当した多くの患者さん達が、元気なお子さんを出産されているのを日々の診療の中で経験しています。

 以上のように、現在のところ妊娠中のお母さん、授乳中のお母さん、将来のお母さんを含め、すべての方に影響が生じる事態にはなっておりません。むしろ不安に感じるストレスの方が、おなかの中の赤ちゃん、育児などに影響を与えかねません。心安らかに、過ごされますことを祈念いたします。
http://www.jsnm.org/japanese/11-03-28