エボラ 〜デマに惑わされず冷静に行動するために〜

いよいよ日本でもエボラ疑い例が確認されました。
ただ、現時点での情報によると、この疑い例の男性はリベリアに滞在はしていたものの、感染者との接触は確認されていないとのこと。
このことから考えると、検査の結果陽性となる確率は高くは無いと考えます。

とは言え、いずれ日本でもエボラ患者が確認されるのは避けられないし、来るか来ないかではなく、いつ来るかの問題であると思っています。
その時のためにある程度の心構えを持ったり、情報を仕入れておくのは有益なことです。

そこで、エボラに対する基本的な情報は公の情報ソースに任せるとして、ここでは公の情報の隙間を付く、ネット上の不安を煽るようなデマに対して反論を加えておこうと思います。
(公の機関は確たる根拠が無いと断言、確言できない。そこを付いて、無責任な個人やジャーナリストは不安を煽り、注目を集めようとする。公の機関ではこれらへの即時・的確な反論は難しいので、個人的な立場から反論を加える)

このエントリで最低限確認しておくエボラの基本的な性質は以下の4つのみ。

・エボラは潜伏期には感染力は低い。発症後に感染力が強まる。
・エボラは体液(血液、下痢、嘔吐、精液、汗など)との直接接触でうつる。飛沫による感染(半径1m程度)はありうる。
・エボラの初期症状は風邪・マラリア赤痢などに似ていて区別が難しい。
・エボラは石鹸やアルコールで無害化できる。


そして、不安を煽るデマへの反論材料となる、踏まえておきたいエボラの感染例が以下の3つ。

○ナイジェリアでの例(パトリック・ソーヤー)

リベリア国内でエボラに倒れた妹を看た後、リベリアからアメリカに移動する途中、経由したナイジェリア・ラゴスの空港でぶっ倒れる。
入院後、エボラと確認。
エボラと診断されたパトリック・ソーヤーは、自暴自棄からか、自分の糞尿を医療関係者にぶちまける。
その医療関係者は政府当局の監視下に置かれたが、看護婦の女性が夫を伴ってナイジェリア国内を自動車で移動。
感染者20名で終息宣言。
ちなみにパトリック・ソーヤーはアメリカに住む娘の元に向かっていた。
非常に恐ろしい男。


セネガルの例

患者はギニア人。ギニアの検疫の目を逃れ、陸路でセネガルにある親戚の家を訪ね、滞在していた。
一度体調不良で病院に行ったものの、親戚の家に戻る。
症状が治まらないので感染症の専門病院を紹介され、エボラと確認され入院。
その後、この人物から感染は拡まらず、セネガルはこの1名で終息宣言。


アメリカの例(トーマス・エリック・ダンカン)

リベリア国内で、エボラ疑いで発病した近所の妊婦と一緒のタクシーに乗って、病院を探して連れて行った。
それだけなら心優しい男なのだが、その後アメリカに住む婚約者宅(子供も同居)に向かった。
しかも自己申告ではリベリアにいた事実は隠した。
子供も同居する婚約者宅で発症、一度病院に行くが単なる感染症として帰宅。
症状が治まらないので婚約者の呼んだ救急車で病院へ。
治療行為にあたった看護婦2名に感染したが、同居した婚約者や子供には感染せず。


これらの感染例を踏まえて、ネット上にある以下の点に一問一答形式で反論する。


・空気感染しているのでは?西アフリカではエボラの感染拡大が止まらないし。

もしエボラが空気感染するなら、アメリカのダンカンの例、セネガルの青年の例では同居人に感染しているはずだし、ナイジェリアのソーヤーの例では飛行機の同乗者に感染が拡大しているはずです。
でもそうはなっていません。
ナイジェリアとセネガルでは終息宣言が出され、アメリカでもダンカンのケースでは同居人にうつってはいません。
空気感染はしていない。


・でも西アフリカでは医療関係者が感染しているようだけど・・・?

それらの国々での医療関係者は、赤道に近い高温の国で、防護服に一日何時間も身を包み作業しています。
加えて、マスク・手袋・消毒薬といった、日本では当たり前の基本的な医療用具すら不足しています。
高温の中、一日何時間も防護服で作業していたら、集中力が衰え、うっかり注射針を自分にあてる、手順を間違えるといったこともあり得ます。
加えて、医療関係者の相手には、感染力が強まった終末期の患者達が含まれます。
こういった要素が医療関係者への感染を増やしていると考えられます。


・飛行機といった密室内では、感染の危険性は高いんじゃないの?同じ便の人がうつっているんでは?

ナイジェリアのソーヤーの例では、ソーヤーは空港に到着してぶっ倒れました。
その時点で症状はそれなりに進んでいたと思われますが、同じ便の人には感染していません。
ある程度の発症はしていても、その時点での感染力は強くないと思われます。


・でもエボラは感染力が強いって言うけど・・・?

確かにそう言われています。
ですが上に挙げたような、空港ですでに発症していたナイジェリアのソーヤー、発症しながら親戚の家に滞在していたセネガルの男性、そしてアメリカのダンカン。
いずれも飛行機の同乗者や同居人には伝染していません。
伝染したのは、治療行為にあたった医療関係者や、長時間行動を共にした家族などが主で、症状の進んだ患者に接触した人々が主です。
これらの状況から考えると、発症初期の感染力は、それ程恐れなくてもいいのでは、とも考えられます。
もちろん用心に越したことはありませんが。


・エボラの予防法は?

エボラは石鹸やアルコールでウイルス膜が破壊されるため、感染力を失います。
初歩的ですが、外から帰ったり、物を口にする時にはよく手を洗う。
風邪やインフルエンザに対する予防法が効果的と考えらえれます。

ちなみに、西アフリカではそもそもこういった石鹸やアルコールと言う消毒薬すら不足していた。
手を洗える程のきれいな水があるなら、むしろ飲む、といった環境。
こういった環境が感染者数を増やしています。


※あくまで個人的な見解ですし、記憶を主に書いているので、後日細かい事実関係については加筆・修正することがあるかもしれません。ただ、主要な事実関係については間違ってはいないと思います。