【残業代ゼロ】 働かせるほど安くなる換算時給で企業の狙いが見えてくる

政府が「高度プロフェッショナル制度」と呼ぶ残業代ゼロ制度については、現在のところ法案は示されていないが、その要綱というものがある。

それがこれ↓なのだが、

労働基準法等の一部を改正する法律案要綱
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11201250-Roudoukijunkyoku-Roudoujoukenseisakuka/0000075870.pdf

この中に残業代ゼロに出来る条件がいくつか示されていて、その中の一つがこれ。
『4週間を通じ4日以上 かつ 1年間を通じ104日以上の休日を確保すること』

1日何時間まで、という制限は無い。
この休日要件さえ満たせば、残業代ゼロが可能になる。
つまり理論上は、「週休2日、後の5日は24時間労働」も可能となる。

とにかくこの要件の場合、決められた休日さえ与えれば、あとは全て労働時間とすることも可能なので、最大可能労働時間を計算すると、

365日−104日=261日
261日×24時間=6,264時間

この6,264時間が、最大限に働かせることのできる時間。

一方で「当面の」年収要件は1075万円だから、最大可能労働時間を時給換算すると、

1075万円÷6,264時間≒1700円 となる。

1075万円は「当面は」これ以上さげられないから、後は労働時間と時給の関係になる。

まぁさすがに24時間労働を261日は無理。企業もそこまで鬼じゃないだろう。
という事で、今の労働基準法と同じ8時間で計算すると、

261日×8時間=2,088時間
1075万円÷2,088時間≒5150円

時給換算で5150円。
まぁ家族を養うサラリーマンとしてはいい数字かな。
でも名前は「高度プロフェッショナル制度」だったはず。
「高度でプロフェッショナルな人材」の時給としては安いんじゃなかろうか・・・

でも実際のサラリーマンとしては、1日8時間以上働いてる人も多いよな。
高度でプロフェッショナルな、経済の第一線で働くような人材なら特に。

そこで、1日10時間労働ならどうだろう。
261日×10時間=2,610時間
1075万円÷2,610時間≒4100円

12時間労働なら
261日×12時間=3,132時間
1075万円÷3,132時間≒3400円

法律ができれば1日16時間以上働かせても許されるので、とりあえず16時間労働としてみると
261日×16時間=4,176時間
1075万円÷4,176時間≒2600円

時給換算で3400円とか2600円、ここまで来るとさすがに「高度でプロフェッショナルな人材」の給与では無い。
でも「高度プロフェッショナル制度」ではこれが可能となる。

マスコミは「時間では無く成果で評価される制度」と報道するけれど、法案要綱には成果とは何かも、成果と賃金を連動すべしとも書いていない。
もちろん成果を上げたら給料を増やすとも書いていない。

むしろ上の計算からは、企業としては働かせれば働かせるほど、時給換算で安い労働力を得ることができる。
もちろん「始めに仕事量を決めておいて、仕事の追加は禁止」とも書いていない。
与えた仕事が終わったらまた次の仕事と、体力の限界まで仕事を追加することで、企業が支払う換算時給はどんどん安くなる。

これまでの残業代制度なら、仕事の追加は残業代コストが増えるので、残業を増やさない、労働時間を増やさないことが企業のインセンティブだった。
ところが「残業代ゼロ」になると、仕事量をどんどん追加する、労働時間を増やすことが企業のインセンティブになる。
仕事を増やせば増やすほど、支払う換算時給が安くなるからだ。

「時間では無く成果で評価」なんてとんでもない。
労働時間を増やすほど、企業にとって「お得」になる制度。
それがこの「高度プロフェッショナル制度」の本質。

使えば使うほど安くなる。「労働者定額使い放題」と呼ばれるのもむべなるかな。

もちろん、年収要件の1075万は「当面」だし、年間104日の休日要件を守らなくても罰則は無い。