飲食物の基準値の話

だいぶ遅くなったが、飲食物の基準値の意味について、自分なりにまとめておこうと思う。
なお、ここで書く事は、単に下のリンクを私なりに解釈しただけのものであって、私のオリジナルでも何でもありません。
http://www.fsc.go.jp/fsciis/attachedFile/download?retrievalId=kai20110325sfc&fileId=160

現在の基準値は、以下のようになっている。

■放射性ヨウ素(Bq/kg)
飲料水      300
牛乳・乳製品   300
野菜類(根菜・芋類を除く):2000
魚介類     2000
※乳児用の飲料水 100

放射性セシウム(Bq/kg)
飲料水       200
牛乳・乳製品    200
野菜類(根菜・芋類を除く) 500
穀類        500
肉・卵・魚・その他 500

この基準値に対しては、だいたい以下のような批判がある。


○汚染された飲食物を食べるのは1回だけじゃないのに、1回の値と比較している
→この基準値は、年間を通して食べた場合が想定されている

○色々な飲食物が汚染されているのに、1つの食品の汚染とだけ比べている
→基準値は、様々な汚染された飲食物を食べる場合を想定している

○大人と子供で感受性が違うのに、大人も子供も同じ基準値なのは問題だ
→感受性の違いを考慮し、もっとも影響が出やすい場合でも問題が無いよう設定されている

ストロンチウムが考慮されていない
ストロンチウムも考慮されている


どうしてこうなるか、それを理解するには、基準値設定の考え方を知る必要がある。
以下、順に説明していく。



■基準値の意味・性質

まずは大前提となる、基準値の意味合いから。
基準値は、飲食物からの内部被曝が、以下の値を下回るように設定されている。

放射性ヨウ素 :50mSv/年(甲状腺等価線量)
放射性セシウム: 5mSv/年(実効線量)

この数値だが、ICRPの勧告に基づくものとされている。
CRPは、等価線量では500〜50mSv、実効線量では50〜5mSvという幅のある値を示しているが、この意味は、上限値は対策が常に必要とされる値で、下限値は対策の費用対効果を考えたときに、メリットがデメリットを上回る値とされている。
そして、この値は、≪対策の必要性を判断する目安であって、健康に影響を及ぼすか否かを示す基準では無い≫、と断り書きがされている。

つまり、基準が目標とする50mSvや5mSvという値は、防護対策をすることで得られるメリットが、しないことによるデメリットを上回る最低限のラインであって、この値を超えると健康に影響が及ぶから危険、というラインでは必ずしも無いということ。

この基準値の性質は、これから基準値を考えていく上で重要なところだから、確認しておきたい。



■放射性ヨウ素の基準値について

放射性ヨウ素は、50mSv/年のうち、3分の1は留保(余裕)分とされ、残りの3分の2を超えないように考えられている。
つまり、50mSv/年のうち、16.7mSvは余裕分で、33.3mSvを超えないようになっている。

で、この33.3mSvを、飲料水、牛乳・乳製品、野菜類(根菜・芋類を除く)の3つのカテゴリにそれぞれ割り振る。
つまり、飲料水に11.1mSv、牛乳・乳製品に11.1mSv、野菜類(根菜・芋類を除く)に11.1mSv、それぞれ割り振る。
(以下単に、水、乳、野菜と書く)

なお、放射性ヨウ素は、根菜類・穀物・肉などに対して基準値の対象から外されているが、それは放射性ヨウ素は短期間に減少し、これら食品が市場に出回る頃には薄まっていることによる。

次に、食品の希釈を考える。
食品の希釈とは何かと言うと、事故が起きて、原発周辺が汚染されたとしても、実際に食卓に上る食品としては、原発周辺のものだけではない。

野菜で言えば、スーパーに行けば様々な産地のものが並んでいるのが普通だし、同じ野菜でも産地によって取れる時期も違うし、輸入物もあるし、特に意識しない限りは、一つの産地の野菜だけを食べると言うことは考えにくい。
汚染地域であっても、ハウス栽培などであれば、汚染度合は低下する。

水道水にしても、水は流れているので、水の入替りがあり、汚染の減少は早く進む。
水源が地下水であればなおさら、汚染度合は低くなる。
ヨウ素では対象とされていないが、肉類であれば、飼料穀物の多くが輸入品である。


こういった理由から、食卓に上る飲食物全てが充分に汚染されているわけでは無いだろうと考えて、0.5や0.1といった低減率をかけるのが食品の希釈の考え方なのだが、放射性ヨウ素に関しては、半減期が短く、放射線の出る期間が短いことから、かける数字は「1」、すなわち、全く希釈されていない、食卓に上る全てが充分に汚染されているものとして計算されている。


で、この水・乳・野菜のそれぞれについて、成人・幼児・乳児それぞれの1日の摂取量を調べ、その1日摂取量に各年齢段階の線量係数(※)をかけると、その1日の単位被曝量が求まる。
で、放射性物質には自然減衰があるから、その自然減衰を加味して、365日食べ続けた場合に、11.1mSvを超えないような、各年齢層における放射能濃度を求める。
※基本的に、乳児→幼児→成人の順に高い

ところで、ここまで単に「放射性ヨウ素」と書いてきたが、ここで「放射性ヨウ素」という言葉の持つ意味について、確認しておく必要がある。
「放射性ヨウ素って、ヨウ素131の事じゃないの?」と考える人も多いだろうし、基本的にはそう考えても間違いではないのだが、細かく言うと、放射線を出すヨウ素には、ヨウ素131以外にも、ヨウ素132、ヨウ素133といったものもある。

これらも甲状腺に集まるという性質は同じなので、被曝線量を厳密に考える場合には、これらについても考慮する必要がある。
そんなわけで、この基準値の設定にあたっては、これら放射性物質も考えられており、ヨウ素131以外にも、ヨウ素132、ヨウ素133、ヨウ素134、ヨウ素135、テルル132の影響が考慮されている。

具体的には、ヨウ素131が1Bqあった場合、その他がどれくらいあるかが比率で分かっているので、それらもあるとして計算されている。
例えば、ヨウ素131が1Bqあったとしたら、ヨウ素133は1.4Bqあることが推定されるので、ヨウ素131だけでなく、ヨウ素133についてもその線量係数をかける。その他の放射性物質についても同じように計算して、それぞれの被曝線量を足し合わせて考えている。

とは言え、これら被曝線量を合計しても、ヨウ素131だけで90%程度を占めるので、基本的には甲状腺被曝線量=ヨウ素131と考えていてもそれほど間違いではないのだが、基準値の設定にあたっては、その他の10%の影響も考えていますよ、という話。

つまり、基準値が300Bqとか言った場合、判断としてはヨウ素131が300Bqあるかどうかになるのだが、その時の被曝線量としては、ヨウ素131だけではなく、その他の影響も考えられていますよ、という話。

注釈が長くなったが、計算結果を示すと、以下のようになる。

○成人の場合(Bq/kg)
水  1270
乳 10500
野菜 5220

○幼児の場合(Bq/kg)
水   424
乳   849
野菜 2500

○乳児の場合(Bq/kg)
水   322
乳   382
野菜 3280

この数字の意味を確認しておくと、例えば野菜で言えば、
・成人であれば、成人の野菜摂取量と放射性ヨウ素への感受性を考えれば、5220Bq/kgまでなら、1年間で11.1mSvを超えないだろうし、
・幼児であれば、その野菜摂取量と放射性ヨウ素への感受性から、2500Bq/kgまでなら、1年間で11.1mSvを超えないだろうし、
・乳児であれば、その野菜摂取量と感受性から、3280Bq/kgまでなら、1年間で11.1mSvを超えないだろう、
と言うことを意味している。

ここで、乳児よりも幼児の方が、11.1mSvに達する濃度が厳しい。
放射性ヨウ素に対する感受性は乳児の方が高いのだが、どうしてこのような結果になっているかというと、乳児よりも幼児の方が、野菜摂取量そのものが多いことが影響している。

そして、基準値の決まり方だが、上の計算結果から、各食品群の一番厳しい値を抜き出すと、こうなる。

○計算結果の最小値(Bq/kg)
水   322(乳児)
乳   382(乳児)
野菜 2500(幼児)

数字を丸めてしまって、

水   300(元々は乳児の値)
乳   300(元々は乳児の値)
野菜 2000(元々は幼児の値)
(Bq/kg)

これが、冒頭示した、放射性ヨウ素の基準値ということになる。

ということで、この基準値は、各食品群を1年間食べ続けた場合に11.1mSvに達しないような、一番厳しい年齢段階の数字を引っ張ってきていることが分かる。

しばしば、大人も子供も一緒の基準値なんておかしい、という批判も目にするが、このように基準値の数字は、どの年齢段階にも通用するように、一番厳しい値が採用されている。
細かく言えば、成人なら水の基準は1270Bq/kgでいいだろうし、幼児なら乳の基準は   849Bq/kgでもいいのだろうが、全年齢段階に適用できるように、一番厳しい値が採用されている。

ちなみに、3月に水道水からヨウ素が検出されたときは、乳児用の飲料水の基準として、300Bq/kgを3分の1した、100Bq/kgに設定された。
これは元々、乳児の値だった300Bq/kgをさらに3分の1しているわけで、基準値設定の背景を考えれば、かなり厳しいものであったことが分かる。



放射性セシウムの基準値について

放射性セシウムの基準値も、基本的な考え方は放射性ヨウ素の場合と同じ。
実効線量の5mSv/年を、水・乳・野菜・穀類・肉その他の5つのカテゴリに、5分の1ずつ、それぞれ1mSv/年ずつ分け、各年代の年間摂取量と放射性セシウムへの感受性から、それぞれの食品群において、1mSvを超えないような濃度を求めている。

ここで、セシウムの場合、併せてストロンチウムも考慮されている。
原発から放出される放射性物質は、だいたいその存在比というものが分かっている。
例えば、セシウム137が1Bqあった場合、セシウム134は幾らあるとか、ストロンチウムは幾らあるとか、だいたいその比率が分かっている。

ストロンチウムの分析は、結果が出るまでに時間と手間がかかるので、緊急時に分析して結果が出るのを待っていては、迅速な対策は難しい。
そこで、セシウムストロンチウムの比率を使って、セシウムが検出されればそこに一定のストロンチウムもあるものとして、1mSv/年に含まれる被曝線量として計算している。

具体的には、セシウム137:セシウム134:ストロンチウム89:ストロンチウム90の存在比は、以下のようになっている。
0.455(Cs137):0.545(Cs134):0.287 (Sr89):0.046 (Sr90)
なお、内部被曝への寄与率は、Cs137とCs134で約63%、Sr89とSr90で約37%とされている。
ストロンチウムの寄与が以外に大きく評価されていることが分かる。

(ちなみに先週、ストロンチウムが出たというニュースに対して、そんな大した話じゃないという趣旨のつぶやきをしたが、それはこういう理解が念頭にあったから。つまり、ストロンチウムからの被曝量なんて、既に『織り込み済み』であるということ)

次に、食品の希釈を考える。
セシウムヨウ素と違い、半減期が長い。
それだけ影響の出る期間が長いため、色々な地域の食物を食べる機会も増えるので、ここでは希釈率が使われる。
ヨーロッパでは、年間で見た平均濃度はピーク時の0.1以下であり、チェルノブイリの場合でもこの0.1以下というのは安全側の数字であったとして、0.1を用いて基準値を求めている。

だが、日本の基準値設定では、より厳しい条件を設定するとして、0.5を採用している。
0.1より5倍、安全側に立った数字と言うことになる。


そして、水・乳・野菜・穀類・肉その他のそれぞれについて、成人・幼児・乳児それぞれの1日の摂取量に、希釈率の0.5をかけ、その摂取量に各年齢段階の線量係数をかけ、その1日の単位被曝量が求まる。
で、セシウムなどの自然減衰を加味して、365日食べ続けた場合に、1mSvを超えないような、各年齢層における放射能濃度を求める。

もちろん、この計算でもヨウ素の場合と同じように、セシウム137やセシウム134だけでなく、ストロンチウム89、ストロンチウム90もあるとして、それらからの被曝線量を合算して計算されている。

この計算結果を示すと、以下のようになる。

○成人の場合(Bq/kg)
水     201
乳    1660
野菜    554
穀類   1110
肉その他  664

○幼児の場合(Bq/kg)
水     421
乳     843
野菜   1686
穀類   3830
肉その他 4010

○乳児の場合(Bq/kg)
水     228
乳     270
野菜   1540
穀類   2940
肉その他 3234

この数字の意味も、ヨウ素の場合と同じ。例えば肉その他で言えば、
・成人であれば、成人の肉その他摂取量と放射性セシウムへの感受性を考えれば、664Bq/kgまでなら、1年間で1mSvを超えないだろうし、
・幼児であれば、その肉その他摂取量と放射性セシウムへの感受性から、4010Bq/kgまでなら、1年間で1mSvを超えないだろうし、
・乳児であれば、その肉その他摂取量と感受性から、3234Bq/kgまでなら、1年間で1mSvを超えないだろう、
そう言うことを意味している。

放射性ヨウ素の場合と比べて興味深いのは、乳以外の全てで、成人の方が1mSvに達する濃度が厳しい。
これは、放射性セシウムの場合、放射性ヨウ素ほど年齢間の影響度合に違いが少ない(線量係数があまり変わらない)ことに加え、成人の食品摂取量そのものが多いことが影響している。

そして、同じように、上の計算結果から、各食品群の一番厳しい値を抜き出す。

○計算結果の最小値(Bq/kg)
水     201(成人)
乳     270(乳児)
野菜    554(成人)
穀類   1110(成人)
肉その他  664(成人)

数字を丸めてしまって(と言うか、穀類に至っては半分にしてしまっている)、

水    200(元々は成人の値)
乳    200(元々は乳児の値)
野菜   500(元々は成人の値)
穀類   500(元々は成人の値)
肉その他 500(元々は成人の値)
(Bq/kg)

これが、冒頭の、放射性セシウムの基準値ということになる。
ちなみに基準値を超えたか超えないかの判断は、セシウム137と134の合算で行われる。

ここでもやはり、基準値は、各食品群を1年間食べ続けた場合に1mSvに達しないような、一番厳しい年齢段階の数字を引っ張ってきていることが分かる。



■その他の論点

そんなわけで、冒頭の基準値に対する批判については、以下のように答えられると思う。

○汚染された物を1回だけ食べる想定じゃなく、年間を通して食べた場合を想定しているし、
○1つの食品が汚染された場合じゃなく、様々な食品が汚染された場合を想定しているし、
○大人と子供の感受性も考慮して、どの年齢段階でも通用するよう設定されているし、
ストロンチウムの影響も考慮されている

まぁ、これまでを振り返ると、飲食物から放射性物質が検出されるたびに毎回、「これは危険か」と質問し、それに対する答えも毎回、例えばヨウ素であれば「50mSv以下だから大丈夫」というようなものだったから、上のような批判も出たのだろうが、基準値の仕組みを理解すれば、そのような批判は当たらない事が分かる。

毎回同じ答えじゃなく、食品毎に11.1mSvに分かれているんだと言えば良かったという考えもあるかもしれないが、11.1mSvというのはあくまで基準値の考え方で使われた数字であって、基準値そのものではない。
水で11.1mSv超えたら危険なのか、野菜で11.1mSv超えたら危険なのかと言うと、そういうわけでもない。
健康への影響というのは、あくまでトータルで考えた時にどうか、という話でしかない。
そんな訳で、このような説明になってしまうのは、仕方のない事だと思える。


あと、その他の批判としては、
「基準値は、1回の事故で汚染された場合を想定しており、継続して汚染状況が続いているような場合には問題がある」
というものがある。
これについては、確かに基準値の考え方は、初期段階で最も高く汚染され、その後は半減期により減衰して行く、という考え方をしているので、確かにそのような面はある。
ただ、では現状はどうかというと、陸上であれば3月の水素爆発、海中であれば4月の汚染水の流・放出により汚染が広がった後は、大きな汚染は起きていない。

確かに、原発からの放射性物質の漏洩は完全には止まっていないものの、その量は、周辺環境に影響を及ぼすようなレベルでは無いと思われる。
[理由]
陸上:周辺モニタリングの線量が上がっていないし、原発敷地内における空気中の放射能濃度は基準値付近である。
海中:全測定地点で基準値未満、又は不検出である。

このようなことから、今後大きな汚染が起こらない限り、今回の事故においても基準値は有用であると思われる。



今回の事故を受け、基準値に問題点・反省点があったとすれば、放射性ヨウ素で魚介類への基準値が設定されていなかったことだろう。
今回の事故が起きるまでは、放射性ヨウ素では魚介類に対する基準は設定されていなかった。

今回は、汚染水の海への流・放出があったこと等から、特に魚類へのヨウ素の汚染が確認された。
これを受け、野菜類の基準値2000Bq/kgが準用され、規制値として使われた。
この点は、確かに問題があったし、今後の反省材料となるだろう。

ちなみに、参考までに、基準値の設定と同じ考え方、同じ式を用いて、魚介類による年間の甲状腺等価線量を算出してみた。
結果は以下の通り。

成人:1.3mSv/年
幼児:3.4mSv/年
乳児:2.4mSv/年

これまでに書いた通り、ヨウ素には16.7mSvの余裕分がある。
これらの値は、この余裕分で充分吸収できる値だろう。



さて、ここで余裕分という言葉が出た。
最後に、基準値の余裕分について触れて締めくくりとしたい。

まずは今書いたように、放射性ヨウ素では50mSv以下に抑える事を目標としながらも、その3分の1の、16.7mSvは余裕分としている。

次に食品の希釈だが、ヨウ素では1、セシウムでは0.5だった。
つまり、ヨウ素では全ての食品が充分に汚染されており、セシウムでは半分の食品が汚染されている、として考えていた。

ヨウ素について考えれば、今回の福島でも食品の全てが汚染されていたわけでは無いと思うし、汚染されていた食品であっても、基準値上限まで汚染されていたわけでもないだろう。
セシウムについて考えれば、この0.5という数字は、かなり余裕をみた数字だという事は既に書いた。
したがって、現実的には、この希釈の部分でも余裕が生じているのではないかと思う。

また、放射能の減り方にしても、基準値の設定では、放射能は物理的半減期で減るとしか考えていない。
しかし、現実にはもっと早い速度で減っていると思われる。

この辺についての一例として、福島市内のある水道水を示す。
3月18日午前2時に、170Bq/kgを検出した水道がある。
170Bq/kgがゼロになるには、通常の物理的半減期であれば2箇月程度かかるはずだが、この水道では4月11日にはもう検出されなくなっている。一月もかかっていない。
ちなみに、セシウムに関しては、始めから不検出。
仮にヨウ素であっても、全ての飲食物が充分に汚染されているわけではないし、減り方にしても物理的半減期よりも早く減るということが分かると思う。


そして、ストロンチウムについても余裕がある。
ストロンチウムについてはセシウムの項で、セシウムの一定割合あるとして被曝量に計算されていると書いた。
この比率は、チェルノブイリの事例を踏まえて、セシウム137が1に対して、ストロンチウム90が0.1とされている(ストロンチウム89はさらにそこからの比率で計算されている)。
そして、そのような計算の結果、被曝量に占める割合は、セシウムからが約63%、ストロンチウムからが約37%で、ストロンチウムの影響が意外に大きく考えられていると書いた。

もちろんこれは、セシウム137に対して、ストロンチウム90が0.1の場合。
もしストロンチウムの存在割合が少なければ、実際の被曝量はもっと少ない事になる。

では今回の福島はどうかと言うと、これまでのモニタリング結果では、0.0001〜0.0005。
これは、チェルノブイリでは炉心の爆発によって原子炉の蓋が吹き飛んだから、中の放射性物質が飛散したが、福島の場合はそこまででは無く、気体状の放射性物質が主に放出されたから、ストロンチウムの割合が小さくなったと見られている。

まぁつまり、0.1で考えていた時よりも、ストロンチウムの線量はもっと少ない。
これまでの測定結果からだと、0.1のときと比べて、200分の1から1000分の1の線量しかないだろう。

ストロンチウムの線量への寄与は約37%と考えられていた。
つまり、セシウムで1mSv被曝する場合、ストロンチウムからは0.59mSv、合計して1.59mSv 被曝すると想定されていたわけだが、今回の福島では1.00059〜1.00295mSvしか被曝しない計算になる。
つまり、ストロンチウムからの被曝分には、かなりの余裕が生じていることになる。
(乱暴な言い方をしてしまえば、ストロンチウムからの被曝量はほとんど無視できる程度?かもしれない)


■簡単なまとめ

このように、現在の飲食物の基準値は、汚染された様々な食品を、1年間にわたって摂取した場合を想定して設定されている。
年齢段階の感受性も考慮されて、どの年齢段階にも通用するように考えられているし、ストロンチウムの影響も含まれている。

1回の汚染を想定しているが、それは現在でも通用するし、ヨウ素で魚介類への基準値が設定されていなかったが、余裕分で充分カバーできている。

加えて、ヨウ素の3分の1留保、希釈率、減衰の速度、ストロンチウムからの影響などについても、余裕が考えられる。

それにそもそも、この基準値は、
≪対策の必要性を判断する目安であって、健康に影響を及ぼすか否かを示す基準では必ずしも無い≫


現在、飲食物はモニタリングされており、基準を上回る食品は市場に出回らないようになっている。
もちろん、注意は必要だし、正しく怖がる事は必要だが、過度に神経質に怖がる必要は無いと思う。

危険な食品が溢れている、そういう心配から来るストレスの方が、場合によっては健康に悪影響になるのではないかと、私などは思う。

楽しくバランス良く、ご飯を食べたいものだと思う。