日本人は人質奪還に伴うリスクに耐えられるのだろうか?
■小林よしのり氏 ネトウヨはイスラム国と戦う勇気ない野次馬
http://news.livedoor.com/article/detail/9850543/
小林氏の文章にもしばらく接してなかったけど、西部邁氏と仲がいいだけあって、たまに鋭いこと言うんだよね。
さて、この文に触発される形で、私も最近の武力による人質奪還論について思っていることを書いてみようと思う。
イスラム国による今回の人質事件で、政府は自衛隊による奪還作戦の法整備を検討しているし、世間にもこれを支持する声は多いようだ。
私はこういったニュースに対し、
『それはいいけど、やるんだったらまず第一に北朝鮮による拉致被害者を対象にしてくれよ』
といった趣旨のことを(Twitterでは)呟いてきた。
しかし政府や、これを支持するネトウヨ層からは、『まず第一に北朝鮮』という声は多く聞かれない。
対象とされるのはいつもイスラム国だ。
『日本人に対するテロ行為』という理屈からすれば、北朝鮮による拉致被害者が外される理屈は無いし、ましてや自分から危険地帯に出向いたわけでも無く、日本国内で平穏に暮らしていて北朝鮮によるテロに遭ったのだから、道義的な面からも第一対象とされるのは拉致被害者だ。
ところが、政府やネトウヨ層からはこういった声はあまり聞こえてこない。
北朝鮮を対象とすることで何か問題があるのか?
言うまでも無くそれは、【報復】だろう。
自衛隊が北朝鮮に乗り込んで、拉致被害者を救出したとしても、北朝鮮工作員によるテロ行為が起きそうだし、ミサイルが飛んできそうだし、下手すれば戦争にもなる。
日本人の蒙る人的被害は、小さなものではないだろう。
だから北朝鮮が対象だとは言わない。
もしそれが理由で北朝鮮という言葉を出せないのなら、まさにそれが
【人質奪還に伴うリスクだ】
と言いたい。
相手が北朝鮮であれ、イスラム国であれ、他のテロ組織であれ。
日本が武力を用いるということは、その時点で『ケンカを買った』ということに等しい。
『いや、相手が先に手を出してきたんだ。罪なき民間人を卑怯にもさらったんだ』
と言っても、それは正しい理屈ではあるが、力の無い理屈でもある。
理屈はどうあれ、武力を使う時点で、それはケンカを受け入れたということになる。
(その理屈で北朝鮮が矛を収めるか、考えてみればよい)
北朝鮮には報復の可能性があるように、相手がイスラム過激派であっても、自衛隊が乗り込めば報復による日本国内でのテロの可能性は高まる。
何らの罪なき、無関係の日本人が日本国内で被害に遭う可能性は高まる。
人質奪還を叫ぶ人、賛成する人は、果たしてそこまで考えているのだろうか?
危険地帯はアラブ地域、危険な目に合うのはアラブにいる人質と自衛隊、無意識にそう考えてはいないだろうか?
そうではない。
武力を行使すると言うことは、日本国内の危険性も高まると言うことだ。
アメリカやイギリスが武力を行使し、国内でテロの危険性の高まりを受けて、治安組織や情報組織を強化してきたように、日本にもその必要性が生まれるということだ。
私が度々北朝鮮を(Twitterで)引合いに出してきたのもそういうことだ。
武力を行使すると言うことは、応分の報復リスクを負うと言うことだ。
北朝鮮には武力が多いからそのリスクが高い、イスラム国にはそこまでの力は無いだろうからリスクは少ない。
そのリスクの多寡の問題であって、日本が対戦相手として名乗りを上げることに違いは無い。
果たしてそこまで考えているのだろうか。
危険は遠い向こうのこと、日本国内には関係無いと無意識に思ってはいないだろうか。
小林よしのり氏は以下のように厳しい問いかけをしている。
・果たしていまの日本人にイスラム国と本気で戦争するだけの覚悟はあるのか。
・結局、国内の安全圏で物を言ってるだけだ。
・ネトウヨにはイスラム国に行く勇気もイスラム国と戦う覚悟もない。リスクが少ないところで大騒ぎしている、ただの野次馬でしかない。
もう一度考えてもらいたい。
北朝鮮の拉致被害者を武力で取り返しに行くことを。
そしてそこから発生する様々なリスクを。
無関係な国民の犠牲を甘受してでも、最終的に戦争になっても、捕われた同胞を救いに行くか?
それが【武力で国民を守る覚悟】というものだ。
果たしてネトウヨ層にその覚悟があるのだろうか?
10人の人質を救うために100人の命を危険にさらす、その覚悟があるのだろうか?
あるのであれば何故、人質奪還の第一目標は北朝鮮であると聞こえてこないのだろうか?
『リスクが少ないところで大騒ぎしている、ただの野次馬でしかない』
今の段階では、小林よしのり氏のこの言葉が正しいように思える。