海の汚染状況について その2(海水+水産物)

海の汚染状況については、以前の日記で一度記した。
http://d.hatena.ne.jp/akatibarati/20110407/1302183754
その後、汚染状況は継続的にチェックしていたのだが、他の事を優先していて時間が取れなかったため、今日まで書く暇が無かった。

今日は時間が取れたので、東電・文科省水産庁の資料から、海水と水産物の汚染状況を概説する。

※なお、始めに海水の汚染状況から記していくので、水産物のことについて知りたい人は、その項から読んでください。


■海水の汚染状況について

まず始めに、東電の資料から、福島第一原発から30m〜15km付近の状況を、前回と同様に記す(1倍を超えていれば基準値超え、1倍未満であれば基準値以内)。

なお、○倍の右の括弧内の数字は、前回4月6日の汚染状況。


○福島第一北放水口付近(5・6号機放水口から北側に約30m)
ヨウ素131  : 33倍(1000倍)
セシウム134 : 25倍(380倍)
セシウム137 : 17倍(270倍)
(採取時刻:4月15日 14:20)

○福島第一南放水口付近(1〜4号機放水口から南側に約330m)
ヨウ素131  : 15倍(93倍)
セシウム134 : 15倍(40倍)
セシウム137 : 11倍(28倍)
(採取時刻:4月15日 14:00)

○福島第二北放水口付近(福島第一から南側に約10km)
ヨウ素131  : 17倍(55倍)
セシウム134 : 14倍(18倍)
セシウム137 : 9.7倍(12倍)
(採取時刻:4月15日 8:40)

○岩沢海岸付近(福島第一から南側に約16km)
ヨウ素131  : 12倍(65倍)
セシウム134 : 9.7倍(18倍)
セシウム137 : 6.6倍(12倍)
(採取時刻:4月15日 8:10)

○福島第一敷地沖合15km地点
ヨウ素131  : 3.0倍(5.3倍)
セシウム134 : 2.2倍(1.5倍)
セシウム137 : 1.4倍(1.1倍)
(採取時刻:4月15日 9:28)

○福島第二敷地沖合15km地点
ヨウ素131  : 5.0倍(0.63倍)
セシウム134 : 3.5倍(不検出)
セシウム137 : 2.3倍(不検出)
(採取時刻:4月15日 8:58)

○岩沢海岸沖合15km地点
ヨウ素131  : 4.0倍(0.6倍)
セシウム134 : 3.0倍(不検出)
セシウム137 : 1.9倍(不検出)
(採取時刻:4月15日 8:31)

広野町沖合15km地点
ヨウ素131  : 0.43倍(不検出)
セシウム134 : 不検出  (不検出)
セシウム137 : 0.07倍(不検出)
(採取時刻:4月15日 8:05)

南相馬市沖合15km地点
ヨウ素131  : 1.3倍(0.6倍)
セシウム134 : 0.63倍(不検出)
セシウム137 : 0.41倍(不検出)
(採取時刻:4月15日 10:30)

○請戸川沖合15km地点
ヨウ素131  : 4.8倍(9.5倍)
セシウム134 : 3.3倍(3.0倍)
セシウム137 : 2.6倍(2.1倍)
(採取時刻:4月15日 9:58)


全体を眺めると、6日時点では、ヨウ素で最高1000倍、セシウムで最高380倍あった汚染は、15日時点ではそれぞれ最高33倍、25倍となるなど、原発近くの汚染は低下している。

代わりに、沖合15km地点では、6日時点では基準値未満であったり不検出であった場所が、基準値を超えてきたり、基準値未満ではあるが検出されているなど、広範囲に拡散して行った様子が伺える。

そういったこともあってか、前回は分析した10地点中、基準値未満の地点は4地点あったが、今回は10地点中2地点に留まっている。


次に、文科省では、東電の調査範囲のさらに外側、32km〜57km(※)の12地点で、ヨウ素131とセシウム137について、表層水、下層水、それぞれの調査を行っている。

詳細は省くが、4月13日・15日に行われたサンプリングの結果、表層水で基準値を超えたものは12地点中2地点、下層水で基準値を超えたものはゼロ(全地点で不検出)であった。
なお、方角で言うと、東方向の表層水でのみ基準値超の汚染が確認されており、それ以外の方角では基準値超の汚染は確認されていない。

東電・文科省の2つの調査から、現状においては沖合15km付近までは広範囲で基準値超の汚染が確認されるものの、32km以遠になると、汚染範囲は東方向に限定されてくることがわかる。

今後も拡散は続くから、時間が経てば経つほど、基準値を下回る地点が増えることが予想される。

ちなみに、文科省ではスーパーコンピュータを用いた、海水中における放射性物質の拡散予測を行っており、これまでのところ、その予測は概ね現状と一致している。
その予測によると、原発からの遠近を問わず、全ての方向で基準値を下回ってくるのは、4月17日〜21日にかけてと予想されている。

福島第一原発を、北緯37度25分17秒、東経141度02分01秒として計算。



水産物の汚染状況について

水産物の汚染状況については、水産庁が公表している。

それによると、これまでの間に、主に、福島県いわき市沖〜茨城県沖〜千葉県沖〜東京湾〜神奈川県沖といった場所で112件の分析が行われており、福島原発から低レベル排水1万トンの放出が行われた4月4日以降に限っても、88件の分析が行われている。

その結果、基準値を超えた水産物は5件あるが、【全てコウナゴ】である。
他の魚や貝については、【全て基準値未満】である。

コウナゴのみが基準値を超えた理由としては、コウナゴは海面下のごく浅いところを泳ぐことから、放射性物質の影響を受けやすかったためとしている。
なお、基準値を超えたコウナゴは、安全確認の試験操業で取ったものであり、市場には流通していないとのこと。


ちなみに、水産物で多くの人が心配しているのは、海水による汚染もそうだが、【生物濃縮】も多くの人が心配していることだろう。
特に、半減期の長いセシウムによる生物濃縮が心配される。

この点について、これまでの水産庁の見解を紹介しておく。

水産庁によると、【生物濃縮はほとんど無い】とされている。

生物濃縮が、水銀であれば360〜600、DDTであれば12000にまで進むところ、ヨウ素では10、セシウムでは5〜100とされている。

その理由としては、魚がセシウムを取り込んだとしても、魚の体内では塩類と同じ挙動を示し、エラや尿から排出されるため、特定の臓器には蓄積しないから、とされている。
(生物学的半減期は50日程度)

このため、他の有害物質に比べて、生物濃縮の度合いは小さいとされる。



以上が水産庁の見解だが、いずれにせよ、モニタリング結果の推移を見守っていくことが重要だろう。
そして、今確認されている事実としては、【コウナゴ以外に基準値超の水産物は確認されていない】ということ。
そして、いわき沖や茨城県沖のコウナゴは、【出荷されていない】ということ。

これらを理解して、冷静に、適切に、行動することが必要だろうと思う。