まさか原子力緊急事態が起きるとは・・・

原子力緊急事態宣言、いわゆる15条通報。

まさかそれが、本当に起きる日が来るとは…

もちろん、それが起きることが、想定されていなかったわけではない。
起きることは想定していた。
想定して、対処が考えられてはいた。

だが、原発は、放射性物質が外に出ないように、5重の防壁がなされていたし、緊急冷却装置も一つ二つ動かなくても大丈夫なように何重にも配置されていたし、電源確保のための非常用電源も配備されていた。

原発の耐震安全性だって、数年前にだいぶ騒がれたことはあったが、それでも電力会社側は、法令の耐震基準を満たせばいいやではなく、法令よりさらに厳しい独自の耐震基準を定めて、それに耐えられるように建設していた。


でも、それ以上に何より、そういうハード面で大丈夫と言う以上に、原発で何か事故あれば、原子力の将来にとっての大きな傷になるということは、原子力に関わっていた人間なら、誰だって痛感していたはずだ。

世間的には、原子力に関わっている人間は、自分達に都合のいい安全性を振り回して、情報を隠蔽する、マッドサイエンティストのような集団に見えていたかもしれない。
しかし、原子力で何かあれば、真っ先に命に関わるのも、家族を守れなくなるのも、自分達なのだ。
誰が好き好んで、いい加減な安全性と隣り合わせで、仕事をしようとするだろうか。

だから、仮に何かが起こったとしても、ハード面の安全性もそうだが、そういう原発関係者の頑張りが、事態の悪化を食い止めるだろうと私は考えていた。


だが、M8.8。
阪神淡路大震災の180倍とも言われる規模。
それが一度ではない、連鎖的に襲われた。


この想定外、桁外れのエネルギーを前にしては、ハード面の、何重ものバックアップも、突き破られてしまったしまったと、いうことなのだろう。

(但し、付言しておけば、あれだけの大地震、大津波に襲われてなお、まだ対処可能なレベルで踏み留まっているのは、それだけ耐震安全性が高かったことを物語っているとは思うが)

そのような、想定外・桁外れのエネルギーを前に、ハード面が危機に陥いるなか、それを食い止めているのは、現場にいる原発関係者の頑張りである。

状況から察すれば、決して安全とは言えない環境で、次に何かあれば自分の命さえも定かでは無い状況で、事態の悪化を食い止めているのは、現場の原発関係者の頑張りである。


炉心溶融という、想定にはあっても現実にはあってはならない、現実には起こしてはならないその言葉を前にして、現場の人間の心がいかに凍りついたかは、容易に想像できる。


確かに、昨日の緊急冷却機能喪失のレベルであれば、まだ時間的余裕は残されていた。
同じ原子力緊急事態宣言と言っても、すでに敷地境界で高レベル放射線が確認されている訳ではなく、炉心溶融が進む前に、冷却機能のどれか一つさえ復旧できれば、事態の悪化を食い止められたはずだ。


だが、事ここに至って、非常に厳しい局面に直面した。
追い討ちをかける地震での爆発。

原子炉建屋が吹き飛んだだけで、原子炉格納容器が無事だったことは、最悪の事態には進んでいないことを示している。

そして、海水の注入と、ホウ酸の注入。
つまり、最後の手段。

これで、原発1基がおしゃかになる。
柏崎刈羽の運転も満足に行かない中、46万kwが消えてなくなる。
もう補修して再使用とか、そういうレベルじゃなくなる。


原発に対する風当たりが強い中、新しい原発なんて、そうそう作れるものじゃない。
今後の電力供給を考えれば、廃炉という決断は、ギリギリの決断だったのだろう。


海水とホウ酸注入で、ひとまずこれで収束に向かうだろう。

だが、生き残った原発も含めて、今後の電力供給を考えると、将来の重い課題になるし、現になりつつある。

だが今はともかく、現場の人間の頑張りに期待するしかない。


【追記】
一つ書き忘れていた。
福島原発の電気ってね、東京に送られているんだよ。
今回の件で、反原発派が勢いづくんだろうけど、自分達が使っている電気がどこで作られているのか知っているのかな。