飯舘村の状況(放射線は下がっている)

このニュースに関しては、

IAEAが避難を勧めているのに、政府は聞こうとしない。何事だ!」

という論調が多い感じだけど、私は、もう少し難しい話ではないかと思う。


まず、飯舘村の土壌から、周辺より高い値の放射能が検出されているのは事実だ。
その情報は既に10日以上前から、福島県を通じて、国も入手している。
IAEAに指摘されるより以前に、国も飯舘村の土壌の放射能が高いことは認識していた。

ただ、その放射能の水準は、高い値を示してから、急速に低下してもいる。
具体的に、土壌1kg当りの数字を示せば(Bq=ベクレル)、

3月20日には、ヨウ素131が 1,170,000Bq、セシウム137が 163,000Bq検出されたものが、
3月29日には、ヨウ素131が 58,400Bq、セシウム137が 25,100Bqにまで低下している。


また、健康への影響として、外部被曝内部被曝を考えるとすれば、土壌の放射能よりも、空間線量率や空気中の放射能の方が重要になるはずだが、3月30日現在の数字で、

空間線量は、7.5μSv/h。
これは、福島市で過去に記録したレベルよりも低い。
福島市の最も高いときと比較して、1/3以下)

空気中の放射能は、バラツキはあるものの、おおむね空気中の濃度限度に収まっている。
(少し細かく言えば、ヨウ素131は時たま濃度限度を超えるものの、セシウム137は不検出のときもあるくらい、濃度限度を下回っている)

ちなみに、飯舘村の水道水(簡易水道)については、一時期基準値を超えたものの、現在は基準値を下回っている。
ヨウ素131は 77.2Bq/kg、セシウム137は不検出)


確かに、土壌では高い値が出ているが、健康への影響を考える際により重要な、空間線量、空気中の放射能濃度については問題ないレベルにあるし、水道水についても基準値を下回っている。


ちなみに、IAEAの避難基準としては、今回報道されたものの他にも、回避線量で50mSvというものがあり、30日の飯舘村の7.5μSv/hは、これと比べて充分低い値。

また、IAEAが行った勧告と言うのも、別の報道によれば、「避難を勧告した」と言うよりも、
「土壌から高い値の放射能が検出された。ただ、今回の数字だけでは避難が必要とは判断できない。しかし、高い値が検出されたのは事実だから、今後も引き続き注視していくように」
というものであったらしい。


これらを総合して考えると、政府が語った、

「現段階での避難指示は必要ない。ただし、今後も詳細な調査を行っていく」

という発表は、私には妥当なものであるように思われる。



確かに、今回の、
飯舘村の土から、高い値の放射能が検出された」
という報道だけを見れば、多くの人は、これは直ぐに避難が必要だ、政府は何やってるんだ、と考えてしまうだろう。

だが一方で、飯舘村放射線量が下がっているとか、空気も問題になるレベルでは無いとか、水道も基準値以下だとか、そういう情報は報道されただろうか。

今回の報道とセットで、そういう情報も報道されれば、また別の考えをする人も、もっと多くなったのではないだろうか。

冷静な判断をするには、まずは冷静な情報が必要のはず。
今回の報道が、それに応えるものであったかどうか、私には疑問を感じる。


【余談】
ちなみに、セシウム137の話だけど、多くの人は、半減期30年と聞いて、30年間は半分にならないと思ってる感じだよね。
セシウム137が100ベクレル検出されたら、半分になるには30年待たなければならないと。
だけど、今回示した数字のように、数日の間で大きく下がることもある。
というのも、要は、空から降ってきた微小な物質の話なんだから、土の上に落ちても、風が吹けば飛ぶし、雨が降れば流れるかもしれない。
例えば、降った後に台風でも来れば、一気に薄まってしまうかもしれない。
なので、必ずしも、昨日検出された値が半分になるには、30年待たなければならないと、そういう話でもないんだよ。
だからこそ、環境モニタリングが継続的に必要だと、国の防災指針なんかで書かれているんだよ。