最低最悪の情報発信

内閣官房参与が、「10年20年住めない」とか言っちゃった話。


内閣官房参与=相談役

相談役が、総理の相談にのって来た内容を、記者を相手にポロっと喋っちゃったよ。

しかもその内容が、10年20年住めないかもしれないとかの、非常に重大な内容。

その重大な内容を、相談にのる立場の人が、ポロっと喋っちゃったよ。

最低だね。この情報発信。
最低だね。この松本健一っていう人。


まず、この「10年20年住めないかも」という話、これがどの程度確度の高い情報かは、まだ分からない。
だけどこの場合、どの程度正しいかではなく、正しかろうが正しく無かろうが関係なく、こういう重大な情報は、充分に検討を重ね、政府としての方針を固めた上で、しかるべき立場の人から発表されるべきものなんだよ。

国家の重大事の相談役が、記者相手に、「10年20年住めないかも」なんて、ポロっと言っていい話じゃないんだよ。
国家の重大事の相談にあずかる内閣参与が、記者相手に相談の内容をポロっと漏らしちゃあ、政府の意思決定も危機管理も情報管理も何もあったもんじゃないんだよ。

もしこれが正しい情報なら総理なり官房長官なりしかるべき立場の人が発表する話だし、もし間違った情報なら世間に無闇な混乱と不安を与えることになる。
どっちにしても、内閣参与が記者に喋っていいレベルの話じゃないんだよ。


松本 健一(まつもと けんいち)は日本の評論家、思想家、作家、歴史家、思想史家。麗澤大学比較文明文化研究センター所長。内閣官房参与
コイツは有り得ない。自分には理解できない。



さて、じゃあこの「10年20年住めない」という情報が、どこまで正しいのか。

正直、それを判断できる情報は乏しい。

と言うのは、避難範囲(20km圏内)の、環境モニタリング情報が無いからだ。

だから、現段階では、20km以遠のモニタリング結果から推測するしかないのだが、傾向としては、昨日の「避難区域の話」でも書いたように、恐らくは降下物の影響から、北西方向の線量が高く出ていて、他の、北・西・南方向はそこまででもない。

北・西・南方向で、参考になりそうな数値を示すと、

北:3.6mSv/年(24km地点)
西:5.0mSv/年(21km地点)
南:9.3mSv/年(20km地点)

といった数値も出ている。
これは、直近の測定値が今後約1年続くと仮定した、安全側に見た数値なので、今後新たに大きな放出が無ければ、実際の1年後にはこれよりも低くなっていると思われる。


また、20km圏内のモニタリングデータは無いが、一つ参考になる数字として、鳥越俊太郎が4月4日に原発から8km地点で観測したところによると、2μSv(おそらく/時?)であったという。

鳥越俊太郎は普段は好きではないが、この行動は大したもんだと思う)

この観測地点は明らかでないものの、2μSv/hであったとして、仮にそれが継続し続け、屋外に居続けたとしても、18mSv/年を下回る。
原発から8km地点でこのような場所があったということは、一つの参考になるだろう。


全体的に、20km圏内の放射線量は高めであろうとは推測されるものの、高線量地点はある程度定まってきており、北・西・南方向ではそれほどでもない。
今後の放射能の自然減衰や、雨風による流出を考慮すれば、放射線量はさらに減るだろうから、10年20年後まで地元に帰れる希望が無いとまでは、現段階では言い切れないと私は思う。


私は常々、「環境モニタリングを継続していくことが大切だ」、という趣旨のことを書いてきた。

それは、新たな放出があった場合にいち早く変化を捉え、影響を把握する為であるのはもちろんだが、一方で、規制解除に向けて数値を監視し続ける、という意味だってもちろんある。

事故からまだ1カ月で、現状では新たに環境に影響を与えるような放出も無い。

当面、帰ることが難しいのはその通りだが、10年20年帰れないなどと、そんな希望を失うようなことを言えるほどの情報は、私は無いと思う。



それから、北西方向や、それにもし仮に、今後新たに、環境に大きな影響を与えるような放出があった場合の話しだが。

ここから示す対処案は特に、私の思い付きの度合いが大きくなるので、それを含んでおいて欲しいのだが、

放射性物質が、土壌に降り積ったとしても、土壌中への浸透は遅く、年間1cmあるかないかといった程度だ。
極端な話、私は、汚染が強い地域があるのなら、地域の土壌を1cm削ってしまってもいいのではないかと思う。
そうすれば、放射線量はかなり少なくなるだろう。

避難区域が半径20kmとしても、円の半分は海だから、対象となる可住地は628平方キロ。
628平方キロの表土を一律1cm削ったとして、削る土は6,280,000㎥。
東京ドームの容積が1,240,000㎥だから、東京ドーム5杯分くらいだ。
しかも実際には、建物部分とか道路とか山地とかの、実際には削る必要の無い場所もあるだろうし、そもそも汚染度の低い地域もあるだろうから、削る必要のある部分はもっと少なくなるだろう。
(建物とか道路とかは、別途洗浄が必要だが)

どこかに東京ドーム何杯分の処理場は必要になるが、私としては、地元に帰れるように出来るなら、それでもいいのではないかと思う。

と言うか、私がこのようなクダラナイ思い付きの案を書いてまで言いたいのは、この思い付きがいい案だろうとかそんなのでは全然無く、政府は、土をめくってでも家に帰すと、そういった意気込みを持ってやるべきだし、やって欲しいということだ。


原発では今でも、これ以上の放出をさせないために、これ以上周辺への汚染を広げないために、地元を守ろうとして、過酷な環境で頑張り続けている人達がいる。

そのような人達の気持ちを考えても、今この段階で、10年20年は地元に帰れないなどと、指揮する側にいる人間が、言うべき話ではないと思う。

とりあえず原子炉を安定させ、20km圏内の状況を詳細に分析してからでも、遅くは無いのではないかと思う。



土をめくってでも家に帰す、それくらいの労力を払ってでも家に帰すと、政府にはそれくらいの意気込みで取組んでほしい。
それくらいの意気込みで取組んでも、環境がそれを許さなかった、というのであれば、別の方策を考えるのもやむを得ないと思う。

しかし今の段階で、それも総理の相談役ともあろうものが、「10年20年住めないかもしれない」などと言うのは、許される話ではないし、最低最悪の情報発信だと思う。