日本の貯蓄・投資バランス(平成24年度版)

日本の貯蓄・投資バランスのグラフを最新のものに更新する。


内閣府国民経済計算確報 平成21年度・平成24年度)

グラフの細かい見方については以前の記事(http://d.hatena.ne.jp/akatibarati/20120104/1325677154)を参照して欲しいが、ごく大まかに言えば日本の国家規模での黒字と赤字を示している。
プラスであればその部門が黒字(貸出超過)、マイナスであれば赤字(借入超過)を意味する。

例えば2012年度では、民間が約46兆円の黒字(貸出超過)になっているのだが、そのバランスとして政府に約41兆円の赤字(借入超過)、海外に約4兆円の赤字(同)が発生していることが分かる。
(マクロ経済では、経常黒字は国内から海外に対する貸出を意味する)

黒字(貸出)と赤字(借入)は表と裏の関係なので、一国規模で見ればプラスとマイナスは概ね一致する。
したがってグラフの棒の長さもプラスとマイナスで概ね一致する。

なお、ここで言う黒字や赤字は貯蓄や投資と言い換えることもできるので、黒字=貸出=貯蓄、赤字=借入=投資と考えてもらいたい。

この最初のグラフからは、近年においても民間の黒字(貯蓄)と政府の赤字(投資)が40兆円以上のレベルで続いていることが分かる。

念の為に書いておくが、だからと言って民間が偉く政府が悪い、ということにはならない。
黒字と赤字は表と裏だから、赤字が増えないで黒字だけ増える、ということにはならない。
誰も借りてくれないで貸出だけ増やせるか?、と考えればわかるだろう。
このグラフで政府の赤字を20兆円縮小させるとしたら、民間側の黒字も20兆円縮小する。
それはつまり、経済に流れるお金が20兆円以上減ることを意味する。

言い換えれば、民間の40兆円以上の過剰貯蓄を、政府が借金という形で回収して、経済に流していることが分かるのが、このグラフだとも言える。

次のグラフは、民間を企業(企業・金融機関)と家計等(家計・非営利団体)に分けたもの。
こうすることで、民間内での貯蓄の度合いが分かるので、過剰貯蓄の主役が分かる。

以前の記事にも書いたように、1990年代の半ばを境に、それまで貯蓄の主役だった家計等に代わり、企業が貯蓄の主役になっており、その傾向は近年も続いている。
つまり、企業に資金需要が少ないことが分かる。

日本の経済政策を巡っては“企業投資を活発にする”といった考えが強く、安倍政権の第三の矢(成長戦略)にもその考えが色濃く反映されているが、そもそも企業に資金需要が少なく、投資するよりもむしろ貸出主体にまわっていることが分かるのがこのグラフ。
企業が投資しないのは投資資金が無いからではなく需要が少ないからなので、需要を増やすために家計の購買力(所得)を増やすのが先決だろう。

さて次のグラフは、2番目のグラフから企業・金融機関を抜き出し、それを非金融企業と金融機関とに分けたもの。
(非金融企業=正確に言うと非金融法人企業。金融機関を除いた一般的な企業のこと)

近年、貯蓄の主役は企業部門だが、これを見ると金融機関よりもむしろ非金融企業が貯蓄の主役になっていることが分かる。
つまり企業には資金需要も投資意欲も乏しい。

以上のように、近年においても民間の過剰貯蓄と政府の財政赤字は40兆円以上のレベルで続いているわけだが、その国債資金の供給源は家計よりも企業であり、ことに金融機関以外の一般的な企業がその過剰貯蓄の主役になっていることが分かる。
企業に投資意欲を湧かせ、この過剰貯蓄を投資に回すためには、最終消費者である家計の購買力(所得)を増やす政策が強く望まれる。

つまり、労働者の賃金増やせよ。